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【正解】
正解: ハ
本肢は、不実施の場合の通常実施権の設定の裁定(不実施裁定)に関する期間制限を誤解させる内容であり、誤りです。
特許法第83条第1項によれば、特許発明の実施が継続して3年以上日本国内において適当にされていないときは、通常実施権の許諾について協議を求めることができます。しかし、同条第2項において、「その特許発明に係る特許出願の日から4年を経過した後でなければ、裁定を請求することができない」と規定されています。
設問の「いつでも」という表現は、この「出願から4年」という期間制限を無視しているため不適切です。裁定制度は、特許権の独占排他性と公共の利益の調和を図るものですが、出願直後の権利保護も重視されるため、一定の待機期間が設けられています。
【他選択肢の解説】
- イ: 正しい。特許法第79条(先使用権)の「事業の準備」とは、即時実施の意図が客観的に表明されている状態を指します(ウォーキングビーム事件: 最判昭61.10.3)。単なる「銀行への資金借入れの申込み」のみでは、まだ客観的な実施の態勢が整っているとは言えず、準備には該当しません。
- ロ: 正しい。先使用権の効力は、出願時に実施・準備していた「発明の範囲」に及びます(スリッター事件: 最判昭44.10.17)。したがって、その発明の範囲内であれば、実施規模を拡大することも許されます。
- ニ: 正しい。特許法第93条(公共の利益のための裁定)の規定です。公共の利益のために特に必要な場合は、協議を経て経済産業大臣に裁定を請求することができます。不実施裁定(特許庁長官)と裁定権者が異なる点に注意が必要です。
- ホ: 正しい。実用新案法第20条第1項(中用権)の規定です。実用新案法では、第37条第1項第6号(先願違反等)に該当して無効となった場合は、中用権が発生しない旨が柱書で明記されています。これは無審査登録制度である実用新案において、先願調査を怠った者への過度な保護を避けるためです。特許法(第80条)にはこの除外規定がないため、実・特の重要な差異です。
【試験ポイント】
1. 裁定通常実施権の期間要件 (特83条)
- 「3年以上不実施」かつ「出願から4年経過」の両方が必要です。
- 協議が成立しないことが裁定請求の前提となります。
2. 先使用権の「事業の準備」 (特79条)
- 判例(ウォーキングビーム事件)の定義「即時実施の態勢」を暗記してください。
- 単なる計画や、漠然とした準備(資金調達の打診など)では足りません。
3. 実用新案法の中用権 (実20条)
- 特許法第80条と異なり、先願違反(実37条1項6号)による無効の場合は中用権が発生しません。
- 実用新案の「無審査登録」という性質に由来する制限です。
改正履歴: 令和3年改正により、裁定制度における「裁定」の名称が一部整理されましたが、本問の根拠条文の骨子に変更はありません。
関連判例: ウォーキングビーム事件(事業の準備の定義)、スリッター事件(先使用権の範囲)
【正解】
正解: ニ
本問は、意匠法第4条(新規性の喪失の例外)の適用要件と、国際出願における特例に関する理解を問う問題です。
意匠法第60条の7第1項により、ハーグ協定に基づく国際意匠登録出願については、新規性の喪失の例外(第4条第2項)の適用を受けるための手続(第4条第3項)に特例が設けられています。通常、国内出願では「出願と同時」に適用を受けようとする旨の書面を提出する必要がありますが、国際出願では国際公表の日後、経済産業省令で定める期間内(30日以内)に、特許庁長官に対して書面および証明書を提出することが認められています。これは、WIPO(世界知的所有権機関)への国際出願時に、日本独自の様式である例外適用の書面を添付することが実務上困難であることに配慮した規定です。したがって、選択肢ニの記述は正しいものです。
【他選択肢の解説】
- イ: 誤り。本問の令和3年度当時、自ら公開した複数の意匠(イとロ)について例外適用の適用を受けるには、原則として公開された意匠ごとに手続を行う必要がありました。本意匠イの出願Aにおいて、類似意匠ロの公開についても手続を行わない限り、ロの公開を理由に拒絶される可能性があります。なお、令和5年改正(2024年1月施行)により、現在は「最先の公開」について手続をすれば、その後の公開については手続が不要となりました。
- ロ: 誤り。出願変更(意匠法第13条)の場合、元の特許出願時に新規性喪失の例外の手続(特許法第30条第3項)を行っていれば、変更後の意匠出願時に改めて手続をしなくても、同時に提出されたものとみなされます(意匠法第13条第5項)。本肢は「手続を行わなければ...回避することができない」と断定している点で誤りです。
- ハ: 誤り。新規性の喪失の例外(意匠法第4条第2項)が適用されるのは、「意に反して」または「権利を有する者の行為に起因して」公開された場合に限られます。乙が独自に創作して公開した意匠ロは、甲の行為に起因するものではないため、甲は乙の公開について例外適用の規定を受けることはできません。
- ニ: 正解の確認: 意匠法第60条の7第1項に基づき、国際公表後に手続を行うことができるため、正しい記述です。
- ホ: 誤り。パリ条約の優先権(第4条B)は、優先権主張日(第一国出願日)から日本出願日までの間の行為(他人の出願や公開)によって不利にならないことを保障するものです。しかし、第一国出願前に行われた公開(本肢のX国での販売)については優先権では救済されません。したがって、日本出願において別途、意匠法第4条の手続を行う必要があります。
【試験ポイント】
新規性の喪失の例外 (意匠法第4条)
1. 適用期間: 公開の日から1年以内に意匠登録出願を行う必要があります。
2. 手続の特例 (国際出願): 国際意匠登録出願では、出願時ではなく国際公表後に書面提出が可能です (意匠法第60条の7)。
3. 優先権との関係: 優先権は「第一国出願前」の公開を救済しません。第一国出願前に公開がある場合は、必ず第4条の手続を併用する必要があります。
4. 他人の独自創作: 権利者の行為に起因しない「他人の独自創作による公開」は、第4条の救済対象外です。
改正履歴: 令和5年改正により、複数の公開がある場合でも、最先の公開について手続をすれば、その後の類似意匠の公開については手続が免除されるようになりました (意匠法第4条第3項ただし書)。
【正解】
正解: イ
防護標章登録出願において、商標登録の登録番号の記載は、出願日の認定を受けるための必須要件です。
1. 商標法第68条第1項において、出願日の認定に関する商標法第5条の2の規定が防護標章登録出願に準用されています。
2. 防護標章登録出願は、自己の登録商標と同一の標章について行うものであるため(商標法第64条第1項)、その基礎となる「登録番号」の記載がない場合、出願の内容が特定できず、商標法第5条の2第1項第4号(商標の記載が明確でない)に準じて、出願日の認定がなされません。
3. 特許庁の運用(方式審査便覧)においても、防護標章登録出願の願書に「登録番号」の記載がない場合は、出願日を認定しないものとされています。
したがって、登録番号の記載がなくても出願日が認定されるとする本肢は誤りです。
【他選択肢の解説】
- イ: 正解の確認。防護標章登録出願では、基礎となる登録商標の登録番号の記載が出願日認定の要件(商標法第68条第1項で準用する第5条の2第1項)に含まれます。
- ロ: 正しい。令和3年改正により、博覧会出品による優先権(商標法第9条)の証明書提出について、期間内に提出できなかった場合に、その理由を問わず(不責事由がなくても)、期間経過後2月以内であれば提出が可能となりました(商標法第9条第3項)。
- ハ: 正しい。商標登録出願を団体商標の商標登録出願等に変更した場合、元の出願で提出した博覧会出品の証明書等は、変更後の出願と同時に提出されたものとみなされます(商標法第11条第5項)。
- ニ: 正しい。商標法条約の締約国への出願に基づく優先権主張(商標法第9条の4)において、優先権証明書は出願日から3月以内に提出する必要があります(商標法第13条第1項で準用する特許法第43条第2項)。
- ホ: 正しい。出願の分割(商標法第10条第1項)は、原出願が審査等に係属していること、および分割と同時に手数料を納付することが要件です。原出願の手数料(商標法第76条第2項)が未納で却下されるべき状態では、適法な分割はできません。
【試験ポイント】
【1. 防護標章登録出願の出願日認定】
防護標章は「特定の登録商標」の化体した信用を保護する制度であるため、願書における登録番号の記載は、通常の出願における「商標の記載」と同等の重要性を持ち、出願日認定の要件となります。
【2. 令和3年改正による手続救済 (商標法第9条第3項)】
博覧会出品の証明書提出について、従来は「責めに帰することができない理由」が必要でしたが、改正により「理由を問わず、期間経過後2月以内」であれば救済されるようになりました。特許法の国内優先権やパリ優先権の証明書提出(特43条等)とは異なる緩和措置である点に注意が必要です。
【3. 出願の分割の時期的・手続的要件】
分割は「審査、審判、再審に係属している間」に限り可能ですが、手数料の納付が前提となります。手数料未納による却下処分が確定する前であっても、手続の適法性が問われます。
改正履歴: 令和3年改正により、商標法第9条第3項(博覧会証明書の提出期限徒過の救済)が新設されました。
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